2月25日

 何もかもうるさくて泣き喚きたかった。誰にも何も指図されたくなかったし、文句も言われたくなかった。何かが起こるには状態が悪すぎる。知らないよ、と思いながら淡々と相槌を打つけれど、打っても打っても解決してくれない。180%の出来が何もうれしくないよ。

 まだ何もしていないのに虚しくなる。付き合っているだけならすぐに別れていた。夫婦だからと特別扱いしすぎ?思うことの何が本当なのかわからないのに私はここにいるままだし、そうしている間にも朝は来て、仕事が始まって、私も親もおばあちゃんもみんな歳を取って、こんな最悪な状態でおばあちゃんが死んだら耐えられない。最近はメールも送っていない。例えばいまそんなことになったら夫はお通夜やお葬式に来るのだろうか。どんな顔をして?

 明日はいちばん好きな服を着て、週末、おばあちゃんたちに手紙を書こう。

2月24日

 死にたい気持ちで起き、死にそうになりながら仕事をした。大切なのは気力らしい。普段通りの気力があればもう少し早くに終えていたと思う。

 昼間、横たわりながら「飛び降り 死ぬ高さ」と調べ、階数もだけれど体のどこがどこへ着地するかが大切だということを知る。自殺未遂者によると、怖がるも何も気が付いたら落ちているようだし、落ちている最中はこの上なく気持ちいいし、落ちたときは「落ちたな」とだけ思って意識を失うらしい。ここまで読んで、いまではないなと安心する。息が切れるほどに絶望していても、いまではない。そう思ってようやく眠れた。少しでも眠って頭をすっきりさせるために横たわっていたのだ。

 変わることを約束し、マンションを更新した。やっぱりわからない。私だけが一緒にいたいと言っているのだと思うといつでも吐きそうだ。一緒にがんばってよ。

2月23日

 一昨日のは気の迷いだったと言われた途端音も立たずに何かが崩れ、その間に話が一気に進んだ。いま考えると話の流れがよくなかったのかもしれない。もう退去に関して話しはじめているし、私は私で正気を失って夫の家族の連絡先を消すし。気力を失ってベッドに横たわると、話はもう終わり?届を出すのはいつにする?と聞かれる。来週の平日のどこか、と適当に答える。何だこれは?夫は浴室へ向かう。泣きながら横たわっている内に衝撃が違和感に変わり、言葉が出てきたので立ち上がる。

 価値観の、大きな相違があちらこちらに横たわっていることにもう我慢したくないと言う。彼は、違和感や不快を我慢したくない人で、私は、それをとにかく変だ不快だと言いながら乗り越えていく人で、彼にとってはこの「変だ」「不快だ」がもう余計なのだろう。それはそうだよね、一人で生きていたらそんな声聞かなくて済むもの。

 なんて自分勝手なんだろう。なんで結婚したんだろう。そう尋ねると、過去を遡ることができない以上直ちに別れようとしているのだ、としか返ってこないから、もう聞かない。

 話を切り出す前に、切り出した後に、繰り返し考えた。ただの情ではなくいまでも好きであり、大切であり、一生一緒にいるならこの人がいいと思っている。さっき、浴室のドアを挟みながら、私が変わればこの先も考えられるかもしれないとこぼしていた。好き?と聞いたら好きだと言い、愛してる?と聞いたら愛してると真顔で答える。そう聞いても涙が出て止まらなかった。何もかもが変わってしまったことに。あの頃の安心感がもうなくなってしまったということに。

2月22日

 早起きができないのはいつものこと。今日は6時に目覚められたものの、怠くて1時間はソファに沈んでいた。予定どおり午後休に入り、手始めに駅前のタイ料理屋へ。プーパッポンカリーのセット1,800円を頼むも、肝心のメインが重たくて一口目しかおいしく食べられなかった。ソフトシェフクラブがカリッと揚げられているからこその食感、脂っこさ、重み。現金払いだけのお店なのに見事に財布を忘れ、徒歩5分だからすぐ取りに戻りたいが電話番号を伝えたらいいか、と尋ねると「次の時でいいです」と言われる。真っ直ぐな性善説にこわくなってすぐマンションに戻り、払い、ランチ半額券をもらった。有効期限は1週間。寝室で母と電話。とにかくもう、別れてほしい気持ちが前面に押し出されている。夫にはもう信用がないので彼自身が今更何を言っても無駄。夫の実家から父と母のところへ1週間以内に電話がこなければ、親も親でアウト。そうですよね。こんなことを聞きたくないかもしれないけれど、夫から私への愛情が薄れているんじゃないの?そうですよね。愛の形は変わるけれど、「離婚したい」は出てこないだろう。愛している間は。もともと眠かったところに、食後で、こんなに疲れる話をして、もうだめだドラマを観る気力もないとそのまま目を瞑るとオンラインの集まりの10分前。あわてて着替えて顔を直し、セブンイレブンでお酒とお惣菜を調達した。

2月21日

 一人でワインボトルを空け、2本目に突入してから話が始まったので所々記憶が抜けているのだけど、夫はもはや離婚したいとは思っていないようだった。色々、結婚生活自体も、結婚式も、子どものことも前向きに考えられそうだと言っていた。一つだけ、私の両親への謝罪だけどうしようかと悩んでいた。人がいる生活云々はさておき、なのか、私が家事について冷たい口調で頼んでくるのをやめてくれればのこと。いくら数回問いかけられたとは言え、たった一月の間にここまで変わるのか?これまで我慢していたという一年半のことはもういいのか?家事について、たったあれだけのことでだめになるのか?そもそも率先して少しでもやってくれたなら私も言う必要はなかったのだが?なぜいまの貢献度合で優しく頼まれることを望むのか?家族式ならまだいいと言うけれど、そんなに簡単に覆すなら40万円払ってキャンセルしなかったのだが?あなたの実家に請求していい?など、現在進行形で色々浮かんでくる上、既に尋ねたことについても確認が不十分な気がするのでまた話し合わなければならない。

 夕方、夫の母に、夫の言う離婚検討背景が本当なのかを確かめるという理由1割、この人たちだけ何も知らず平穏に暮らしているのはやはり解せないという理由9割で、今回のことを伝えた。ほどなかして電話が掛かってきたのだけど、経緯を聞くと、何も知らなくてごめん、何もできることがなくてごめん、としか言わないので、効果的な打ち手は取れなかったとしても親だったら何かできるでしょう?息子に直接聞いてみるとか?説得するとか?叱るとか?親になったことのない私でさえ思いつくのに?と呆れて、力が抜けた。母が「コロナが理由とはいえ、結婚式がキャンセルになったら色々気になることが出てくるはずなのに何も連絡がない」と言っていたのを思い出した。離婚したらこういう価値観の相違について気を揉む必要もないと思っていたところの逆転だったので、ほっとする一方、こうして書いていくと怒りや疑念がふつふつ湧いてくる。幸せなだけが結婚ではないよ。ねえ夫?

2月20日

 贈り物を選ぶ。マタニティ用品にはピンとこなかったので、テネリータでは頭に巻くコーラルピンクのタオル、桜色のハンドタオル、パッケージに草花が描かれたハンドソープ。これは職場の人たちとの共同ので、私からはマリメッコのボウル。少し前、出産祝いのお返しにマリメッコの小さなボウルとトレーをもらった。ボウルはオートミール、トレイはフォークで食べるサラダやフライドポテトの残りなんかに使ってみて、「食器が素敵だと何を食べても満たされる」ということに気が付いた。その友達からは結婚祝いにクチポールのカトラリーももらっていたので、マリメッコの食器と一緒に使っている。だから私も、これから生活ががらりと変わるであろう彼女に、日常のなかで少しでもほっとできる時間を贈りたくてそのボウルを選んだ。ヨーグルトとグラノーラとか、それか残り物のペンネとか、もしくは炒飯とか、はたまた納豆卵がけご飯とか、何に使ってもいいなと思ったけれど、小さい丼くらいの大きさがあり、それでいて柄が洋風だから、本当は何を入れるのがいいのだろうと側にいた店員さんに聞いてみると、少し考えてから「おかずとか、フルーツとかを…」と言うので、そんなに広い言葉を遣うのなら、本当に何でもいいのだろうなと思った。

 伏見の中華料理屋でランチ。北京ダックを食べたくて、ランチにしては少し高いコースを選んだ。どれも味が優しく、またあっさりとしていて、するっと食べられた。北京ダック、いつも思うのだけど、四つか五つくらい食べたい。食後に出てきたプーアール茶、何となしに飲んだらその苦さにびっくりしたけれど、それがだんだん癖になってきて、また飲みたいと思っていることにレストランを出てから気がついた。笑顔で別れ、白川公園を少し歩き、こんなフジテレビのような科学館があったことを知る。そのまま歩き、最寄駅の、家から見たときには向こう側にある喫茶店へ寄った。天井が高く、インダストリアルなインテリアの店内。5組までしか通せないというので、コーヒーのメニューを見ながら順番を待つ。エチオピアが良かったけれど、豆が切れているというので、似ているらしいブラジルを頼んだ。しっかりと深く、苦手な酸味がほとんどない。やかんにかかるガスコンロの火や、型に入ったフィナンシェ、一人慌ただしく作業をするマスターを眺めながら飲んだ。スーパーで食材を買い込み、帰宅。Netflixで「ファイアフライ通り」というドラマを観はじめた。2話ほど見たところで寝室へ行き、夫の背中にぴたりと体を寄せ、首筋の匂いをかいでいたらすぐ眠りに落ちてしまう。22時、ミートソースを作るには遅すぎる。夫の提案を断り、ジャジャン麺を作った。今日はコチュジャンを足して、具は玉ねぎと豚こま肉、生卵を落としたお酢を回しかける。あと少しの味。浴槽に青いお湯を溜めて、ドラマの続きを観る。ブルーチーズとブルサンに蜂蜜をかけたらおいしかった。今日みたいな日があと何日もあるといい。

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2月19日

 23時、仕事を終えると冷蔵庫から発泡酒を出し、缶から直接飲みながら床の掃除を始める。ラジオを流す。こんな夜中に洗濯機を回す。ホタテだけでは心許ないと思い、コートを羽織り外へ。蛸とブロッコリーのバジルサラダ、カット野菜、青椒肉絲、レモンサワーを買い、めずらしく持ってきたコットンバッグに入れる。長谷川京子YouTubeチャンネルを見ながら食べ進める。ほどなくして鍵の開く音、終電に間に合ったという連絡に気付かなかった。明日は休日の割に早い。

2月18日

 3月7日にパーソナル診断を受けて「似合う」「似合わない」を確認したら、遠からぬ内に美容院へ行きパーマをかけてもらおう。次の美容院のあてはもうほとんどついた。長谷川京子のような、わりと根元の方からくるんとさせて、かつ細かすぎないように。尚、長谷川京子が後髪にまでパーマをかけているかは不明。

 今週末のランチのお店を決めた。池下のお店も良かったけれど、産休前の妊婦を連れて徒歩15分、予約もできないのでは難しい。さっと探し直したらすぐにいい候補が見つかった。点心と北京ダックのコースで、ランチにしては少しリッチ。たのしみ。

2月17日

 白いハートをタイトルにしたメモ帳には大切にしてもらったと思ったことを、黒いハートのそれには大切にされなかったと思ったことを記録している。はじめたのはこの土曜日で、月曜日から圧倒的に白いハートの方に書くことが増えた。もしかして、変わろうとしている?

2月16日

 怒りの消化が上手くいかなくて眠れない。何もかも捨てて記憶もなくしたら楽になれるのにとさえ思う。どうする?本当に。

2月15日

 愛しているんでしょ→愛しているは「けど」にも枝分かれし得るから安心して→愛しているでしょ、今日は何がいやだったの→それにはこういう理由があるよ→まあいやはいやだろうけど、子どもっていますぐにではないよ、顔見たくないの→でも34の内には産みたいけど、今日はそんなに大切にされてないって思ってないよ、休日寝すぎるのが嫌なら私と栄とか行けばいいじゃない→栄が嫌ならドライブは?と重箱の隅を一つひとつつついていく夜。

 今週の土曜は、今月いっぱいで産休に入る同僚とランチ。東山線沿いがいいから覚王山にしようかな。

2月14日

 地震で目を覚ましてそれから6時間眠れなかった。その間に見た友達のツイートがどうしても引っ掛かって、たとえば次に会ったとき普通に話せそうにないなと思ったのでヨガの帰りに全部を消した。こんな形で終わることになるとは思ってもいなかった。その子がオープンな場所にそんなことを書いたせいだし、私がその子の意図しないところでそれを見たせいだし、もしかしたら万が一他の人のことだとしてももう無理だと見切りをつけたせいだし、私がその子に相談したせいだし、夫が離婚を切り出したせいだし、夫と結婚したせいだ。

 離婚が現実味を帯びていく。思っていたより早く決着がつきそうだと思ったのは、結局のところ私も夫も意味のある変わり方をすることはできないだろうということがわかったから。カウンセリングを受けたところで私は存在を消して暮らすことはできないし、子どもを諦めなければならないことに納得できない。そんな結婚生活って何?どうして結婚したの?何度でも尋ねてしまいたくなる。

2月13日

 家を出る時間を過ぎても髪を巻く。新しいブラウスに新しいプリーツスカートを合わせて、電車で240円のところをタクシーに1,200円払う。遅刻するのも遅刻の連絡を入れるのも嫌いだから。

 小食の人向けの、でもおいしいランチセット。自家製ハムとベシャメルソースのオープンサンドイッチ。じゃがいものポタージュが前菜につき、デザートはマルキーズショコラだった。スターバックスが混んでいたから目の前にあった何とも言えない、けれど広さだけは抜群のカフェに入る。そこで韓国のインスタントラーメンの話になって、ジャジャン麺を食べたいと言ったら歩いて行けるところにある韓国食料品店へ連れていってくれた。ものすごく混沌とした、夜には歩きたくないような通り。ずっと覚えていると思う。

 二日酔いの影響なのかランチが小ぶりすぎたのか、とにかくお腹が減っていたのでセブンイレブンに寄って、梅のおにぎりとサラダチキンを買った。わかめと榎茸のスープを温めて、夫が残したフライドポテトも温めて、サラダチキンを割いて、梅のおにぎりは夫にあげて、解凍したご飯にたらこをのせて食べた。たらこが全然なくならないし、お腹が全然満たされないので、その後もご飯を解凍、お茶碗にして大盛り三杯分は食べたと思う。こんなに食べたのは久し振りだった。お皿を下げると眠くなって、糖質の摂りすぎだと思いながら横になった。

2月12日

 23時過ぎ、ようやく仕事を終えて、一足先にくつろぎはじめていた夫に声をかける。いいカウンセラーが見つからなかったとしても、いい加減に話す目処を立てなければと思っていた。「この先のことやっぱりちゃんと考えなきゃなと思ってて、でも今日はもう疲れているしあしたはお互い予定があるから、あさって話し合おう」そう伝えたら、優しいような、なんとも言えない静かな表情で頷くのでもう持たない。